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これはロレックスではありません。もちろんロレックスとして売られたものでもありませんし、ロレックスでないことを承知で購入された時計であることは言うまでもありません。しかしこの時計に出会った時、彼の心はときめきました。そして「恋」に落ちたのです。例えそれがROLEXではない全く別な時計であっても、一目ぼれしてしまいした。ただ、国際法上、この時計を愛することは認められていません。でもこのショッピングが、本物のROLEXとの出会いを邪魔することにはならないのです。それどころか、オリジナルの1/100という嘘のような値段だからかなえられた時計との肌での触合いがあればこそ、新たな本当のロレックスとの再会するという運命が生まれ出ます。

コピー(第一回)703。

おそらくコピーの始まりはクオーツのロレックス、それも一見して分かる粗悪品だったと思います。ロレックスは知る人ぞ知っているものの、

知らない人にとっては全く・・・時計であることすら分からない、そんな頃のことです。だから、「違法だ!」などと騒がれることも無ければ、

「おみやげに、コピーローレックスを買ってきて」と頼む人もいなかったはずです。ただ、ロレックスを愛用している人がそれを目にしたとき、

驚きと微笑みをもって買い求め、日本に持ち帰った。何しろ、百分の一の値段ですから。そして、こう言いながら友達にあげたことでしょう。

「本物は、50万円するんだ」。やがて、人々の心にロレックスは広まって行きます。もちろん、コピーの人気が爆発したのはご承知の通り。

コピー(第二回)その罪715。

「海外ならば、ロレックスが安く買える」当然の成り行きとして誰もがささやくようになると、事情は一変します。”偽物”の出現です。にせもの

を取り巻く環境に微笑ましさなどありません。私の目の前で、青くなり、立ち上がることも出来無くなった「冗談で買われたロレックスですよね」

の持ち主が何人かいました。そんな、(特に愚かな)日本人に用意されていたのはこうです。”だって、三割しか引いてくれなかったんですよ”

コピー(第三回)2001年726。

本当にあったかどうかは別にして、「ロレックスのサービスセンターが誤って受け付けてしまいそう」に精巧なコピーが作られています。

一見しただけでは見分けがつきませんし、カレンダーもロレックス同様ジャストチェンジします。何しろ中の機械は同じスイスの一級品、

名だたる人気ブランド腕時計の機械と全く同じ場合さえあるのです。もちろん、精度や防水性、耐久性などの面も考慮されています。

つまり、その気になればロレックスと簡単に偽ることが出来る見事な時計に仕上がっているのです。ところが、何故か正直なのです。

世の中が熟したと言えばいいのでしょうか、限りなくロレックスに見えるからこそ神経を尖らせてコピーであることを強調する。なぜなら

新聞沙汰になってしまったら最後一瞬にして生息場所を失い、二度とお目にかかれなくなってしまう。それがわかっているのでしょう。

つづく

コピー(第四回)20020306

開き直るつもりは毛頭ありませんが、現実はこうです。コピーの出来が精巧になればなる程、人々はより本物の「ロレックス」が欲しくなる。

皮肉なもので。本人の心の中だけのコピー。それはしかし、その時計が周囲の注目を浴びた時、彼の心に重くのしかかってきます。違うよ、

と言っても、まあね、と行った場合でも、後味の悪い瞬間に。人と会う度そんな思いをさせられていると、やがて勇気が湧いてくるのですよ。

「良心の呵責に苛まれる」自分よさらば。と言い放つ勇気が。

 

ところがです。本物のロレックスを手入れた瞬間、またコピーが彼の手に戻っているではありませんか。

爽やかな気持ちで時計を腕にすることが出来るのです。だって本物のロレックスを持ってるのだから。

 

つづく

 

20161205 修理履歴 オーバーホール

コピー、コピーと気軽に呼ばれている時計の中には、気合の入った「作品」がある。

コピーとレプリカの意味は全く違うのだが、よく出来た作を前にすると、どちらがどうだったのかなど忘れてしまう。