■アンティーク懐中時計修理(昭37 1079 国鉄) SEIKOSHA PLECISION 精工舎(プレシジョン)
手巻き 19セイコー(SEIKO) 15JEW スモールセコンド Second Setting(セコンドセッティング機能付き)
右に画像が続きます。→
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20161205 修理履歴 オーバーホール
橋本時計店では、ガラスが傷だらけで、文字盤がはっきり見えなくなった古い精工舎(SEIKOSHA)の鉄道時計はもちろん、舶来時計と呼ばれた小さな南京虫(ゼンマイ式アンティーク腕時計)のオーバーホールから、大きな大型振子時計(フロアクロック、ホールクロック別名グランドファーザークロック)の出張修理。また、ウォルサムなどの懐中時計や昔の置き時計(ウエストミンスターチャイム)、鳩時計、柱時計の愛称(壁掛け)掛け時計、いわゆる古時計を修理します。更にブローバやオメガの音叉式腕時計。音叉掛時計やクオーツでない古いタイプの電子時計、電気時計もオリジナルを変えずに修復修理いたします。年中無休です。
懐中時計でも、腕時計でも、修理で一番大切な工具は"専用"の機械台(ムーブメントホルダー)です。
残念ながら今はほとんど市販されていません。(オメガなどのスイス製腕時計に使う、しかもクロノグラフ付きゼンマイ時計用が少しだけです)
専用の機械台は、時計のムーブメントの表と裏側の直径や形に合わ、僅か小さめに、精密な加工がされた特殊プラスチックや、金属製で、かつてはSEIKOやシチズンだけでなく、リコーでもオリエントでも、全ての時計メーカーが新しい腕時計の発売に合わせ作りました。特にクロノグラフや、ハイブリッド(アナログとデジタルを併せ持つ)のムーブメントは、複雑な形状だったり、針を取り付ける際の強い圧入に対応したり、必ず専用の機械台で分解と組み立て作業をするよう、各時計メーカーが強く望んだのです。当時の時計修理は、基本的に販売した小売店に義務付けられていて、今では考えられませんが、直接製造元に依頼出来ませんでした。そのためメーカーは、必死で専用の機械台を奨励し、極めて安い価格で販売したのです。その理由ですが、時計屋が時計を壊すからに他なりません。
現在市販されている汎用のユニバーサル機械台(取り付けサイズが変えられるホルダー)は、そのまま使うと、ほとんどの時計のムーブメントで無理やりの保持になり、ムーブメントを傷めたり、作業中に外れる恐れがあります。
セイコー(SEIKOSHA)の懐中時計(通称19セイコー)は、鉄道時計として生き残り、現在も手巻きのゼンマイ式から、クオーツにはなりましたが、広く使われ続けてます。上の2つは違った色に写っていますが、上下反対側の写し別けです。SEIKOの懐中時計(19セイコー)専用機械台(ムーブメントホルダー)、精密な機械を確実且つ安全に、全く傷を付けないで保持し、分解と組み立てが行えます。
★エピラム処理
懐中時計や腕時計の部品はほとんどが、針先ほどの軸を回転させたり、往復回転させて働きます。
その軸受けには、それこそ縫い針の先端の量の僅かなオイルを付けますが、流れ出ないで止まる分量は僅かです。そのため、出来るだけ多くのオイルを軸受けの穴に止め置く工夫がなされています。
エピラム処理といって、部品の表面張力を上げ、油が集まった状態に保ちますが、分解掃除の際に失います。大変高価な薬剤なのと、極めて揮発性が高く(使わなくても直ぐに無くなります)、またこの点が重要でして、この処理の恩恵は時計と持ち主にはありますが、つまり良いコンデションを長く保つので、頻繁に定期的なメンテナンスを奨める時計屋さんが使うことは、まず無いでしょう。
双眼顕微鏡を見ながら、実際に時計の修理をすることはありませんが、
腕時計や懐中時計の命とも言える、ガンギ車とアンクルの爪石を確認し、
最後の仕上げ、ガンギへの均一な注油をする為、絶対必要な装置です。
ただ、市販されているそのままでは使い物になりません。
改造して手元を広げ、極小のスポット照明装置を組み込んであります。
何でも便利な世の中にあって、時計修理の世界は、今もって原始時代
(つまり、工具のほとんどが自作品)と言ってさしつかえないでしょう。
時計の文字がかすむほど傷だらけになった硬質ガラス製
(プラスチックではなく)の風防、手作業で長い時間をかけ、
このように研磨仕上げします。たくさんやってきたので、
今はレンズ工場の研磨装置同様に、手首が勝手に動いて
時計のガラスを磨きます。
★黒沢様(東京都)
セコンドセッティング(秒針規制装置)
オメガの自動巻き腕時計で、天文台クロノメーターを名乗る高価な名機が
ありました。しかしその初期のモデルには、秒針を止める機能は付けられて
いなかったのです。理由は知りませんが、天文台での精度試験は写真です
秒針がどこにあっても差支え無いわけです。しかし日本人の感覚ではあり
得ないことです。
ピッタリ12時位置で時刻合わせをする為に、初めて付けられた仕組みなのでしょう。この機種には書かれていませんが、文字盤に、Second Setting と書かれています。秒針があるところまで来たら止められる、カワイイ仕組み
精工舎(SEIKOSHA)の懐中時計(19セイコー)は、現在ロレックスだけが作り続けている
ブレゲーテンプです(古いインターナショナルも)。実は昔のスイスやアメリカの懐中時計は、
その多くが最も優れていたこのテンプでしたが、時代の流れと共に消えてしまいました。
中の機械が壊れて動かなくなった古い懐中時計のそのガラスは、同様にやはり疲れ切って、
傷だらけです。しかし簡単に新しいものと取り換えていいものでしょうか。割れや欠けが無い限り、
私は時間をかけて丁寧に磨き、新品と変らない当時のままの姿に再生しています。
鉄道時計として、このような姿になるまで毎日、酷使されたアンティーク懐中時計でも、
そのほとんどは製造時の新品に勝るとも劣らない、素晴らしいコンディションに仕上がります。
何故ならば、製造当時に比べ、夢のような高性能の潤滑油が今はあるからです。そしてもちろん、
私が最大限の愛情を注いぎ、丁寧を尽くして修理したからに他なりません。