高振動機械を搭載した45GS(手巻・亀戸)を特別に調整した、45グランドセイコーV.F.A/キャリバー4580
の贋作が先日、ヤフーオークションで90万円以上の値を付けました。当店は修理専門で販売はしません
友人が古い、初代のグランドセイコーをどうしても入手したいと言うので何年かぶりにヤフオクで調べたら
たまたま異常に注目されている手巻きVFAを目に留めました。写真も鮮明で、説明は更に入念でしたが、
一目で大きな違和感を覚えましたので、「”幻の”グランドセイコーVFA」について書き留めることにします。
機械は間違いなくオリジナルキャリバー4580でしたが、シリアルナンバーの0以外が消されていました。
しかし末尾は無くても、数桁の0が並んだ写真には迫力があり、強い説得力を持ちます。問題はケース
文字盤、そして針です。クオーツ以前のセイコーの腕時計の特徴は、SEIKO(精工舎からでしょう)の名
の由来を裏切らない、清楚な気品にあります。特にその秒針の表は完璧な鏡面に仕上げられていて、
精度を命とするGS(あえてクロノメーターを名乗らない)にとって最も象徴的な部品であるわけですから
これはロレックスにも同様なことが言えます。どんなに良くできたコピーのロレックスでも、秒針だけは
その域に届きません。もちろん一般の愛好者の目には本物も偽物も同じ輝きですが、針を取り外して
修理している私の目には、はっきりとその違いを感じ取ることが出来るのです。そして今回のGSVFAの
それは、誰の目にも明らかな”安物”の雰囲気がありました。簡単な例は最も安い自動巻きのSEIKOの
コピー品!文字盤はもちろん、その三本の針の仕上がりは当に、中国製の偽物SEIKOのそれでした。
更に続く。
時計の顔はシンプルなものです。しかし、その裏側は別世界。
拡大時計の写真に「時計グラビア」のタイトルを付けたのは、
誰も知らない本当の美しさがそこにあるからです。橋本一弥
20190602