■アンティーク懐中時計修理(昭32 4502 国鉄) SEIKOSHA PLECISION 精工舎(プレシジョン)
手巻き 19セイコー(SEIKO) 7JEW スモールセコンド Second Setting(セコンドセッティング機能付き)
右に画像が続きます。→
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20161205 修理履歴 オーバーホール
懐中時計でも、腕時計でも、修理で一番大切な工具は"専用"の機械台(ムーブメントホルダー)です。
残念ながら今はほとんど市販されていません。(オメガなどのスイス製腕時計に使う、しかもクロノグラフ付きゼンマイ時計用が少しだけです)
専用の機械台は、時計のムーブメントの表と裏側の直径や形に合わ、僅か小さめに、精密な加工がされた特殊プラスチックや、金属製で、かつてはSEIKOやシチズンだけでなく、リコーでもオリエントでも、全ての時計メーカーが新しい腕時計の発売に合わせ作りました。特にクロノグラフや、ハイブリッド(アナログとデジタルを併せ持つ)のムーブメントは、複雑な形状だったり、針を取り付ける際の強い圧入に対応したり、必ず専用の機械台で分解と組み立て作業をするよう、各時計メーカーが強く望んだのです。当時の時計修理は、基本的に販売した小売店に義務付けられていて、今では考えられませんが、直接製造元に依頼出来ませんでした。そのためメーカーは、必死で専用の機械台を奨励し、極めて安い価格で販売したのです。その理由ですが、時計屋が時計を壊すからに他なりません。
現在市販されている汎用のユニバーサル機械台(取り付けサイズが変えられるホルダー)は、そのまま使うと、ほとんどの時計のムーブメントで無理やりの保持になり、ムーブメントを傷めたり、作業中に外れる恐れがあります。
セイコー(SEIKOSHA)の懐中時計(通称19セイコー)は、鉄道時計として生き残り、現在も手巻きのゼンマイ式から、クオーツにはなりましたが、広く使われ続けてます。上の2つは違った色に写っていますが、上下反対側の写し別けです。SEIKOの懐中時計(19セイコー)専用機械台(ムーブメントホルダー)、精密な機械を確実且つ安全に、全く傷を付けないで保持し、分解と組み立てが行えます。
精工舎(SEIKOSHA)の懐中時計(19セイコー)は、現在ロレックスだけが作り続けている
ブレゲーテンプです(古いインターナショナルも)。実は昔のスイスやアメリカの懐中時計は、
その多くが最も優れていたこのテンプでしたが、時代の流れと共に消えてしまいました。
鉄道時計として、このような姿になるまで毎日、酷使されたアンティーク懐中時計でも、
そのほとんどは製造時の新品に勝るとも劣らない、素晴らしいコンディションに仕上がります。
何故ならば、製造当時に比べ、夢のような高性能の潤滑油が今はあるからです。そしてもちろん、
私が最大限の愛情を注いぎ、丁寧を尽くして修理したからに他なりません。
★齋藤様(神奈川県座間市)
★エピラム処理
懐中時計や腕時計の部品はほとんどが、針先ほどの軸を回転、又は往復回転させます。その軸受けは、それこそ縫い針の先端の穴、極僅かなオイルしか付けられません。そのため、出来るだけ多くの油を付ける工夫がなされています。
エピラム処理といって、部品の表面張力を上げ、油が集まった状態に保ちますが、分解掃除の際に失ってしまいます。極めて揮発性が高く(使わなくても直ぐに無くなる)また大変高価な薬剤ですが、使わない場合の数倍以上、潤滑油をキープできるのです。更にこの点は、潤滑油が流れて他の部位に付く事で起きる不具合を防ぎ、長く機能を維持できます。
橋本時計店では、腕時計や懐中時計の全てと、一部の高級置き時計や掛け時計に、必ずエピラム処理を施します。(尚写真はイメージです。ほとんど全ての軸受けと、耐震装置のルビーや歯車に処理が行われます)
実体顕微鏡を見ながら、時計の修理作業をすることはありませんが、
腕時計や懐中時計の命とも言える、ガンギ車とアンクルの爪石を確認し、
最後の仕上げ、ガンギへの均一な注油をする為に絶対必要な装置です。
市販されているそのままは使い物にならないため、改造して手元を広げ、
極小のスポット照明装置等を組み込んであります。その他、焦点調整の
スライド部分を再仕上げして軽く滑らかに、ノブも使い易い大きさや形に
改造、時計修理の強い味方となるよう、入念に仕上げてあります。
橋本時計店では、数十年間動かないままの、ガラスも割れた古い精工舎(SEIKOSHA)の鉄道時計はもちろん、舶来時計と呼ばれた小さな南京虫(ゼンマイ式アンティーク腕時計)のオーバーホールから、大きな大型振子時計(フロアクロック、ホールクロック別名グランドファーザークロック)の出張修理。また、ウォルサムなどの懐中時計や昔の置き時計(ウエストミンスターチャイム)、鳩時計、柱時計の愛称(壁掛け)掛け時計、いわゆる古時計を修理します。更にブローバやオメガの音叉式腕時計。音叉掛時計やクオーツでない古いタイプの電子時計、電気時計もオリジナルを変えずに修復修理いたします。年中無休です。
7JEW(軸受けなどに7石のルビーが使われている)の19セイコーでは、
テンプ部分以外の軸受けには一切ルビーが使われていないため、15J
の19セイコーとは修理内容が大きく変ります。つまりルビーの軸受けは
減らない代わりに割れます。またルビーの無い軸受けは割れない代わりに
磨耗して、歯車を不動にする、それぞれの特徴があるのです。割れたルビー
は交換する他ありませんが、磨耗した軸受けは修正して再使用できます。
7石の19セイコーではテンプ周りとアンクルにだけルビーが使われ、あとは金属だけの軸受けです。15石の19セイコーより時間をかけルビーの表面や軸受けを研磨仕上げしなければなりません。しかし、ルビーを使わない金属だけの軸受けは、修理人の腕次第で大きくその性能が変わります。本来の時計修理の醍醐味なのです